頻尿一過活動膀胱の豆知識
食生活の欧米化により増加傾向にあります

頻尿−過活動膀胱について
泌尿器科の外来患者様で最も多い主訴は頻尿です。最近は製薬会社のTVコマーシャルにも流れてますが、過活動膀胱という概念が確立されています。過活動膀胱の定義としては、尿意切迫感を必須とした症候群であり、通常は頻尿を伴います。中には切迫性尿失禁(トイレまで間に合わない)を伴う場合もあります。過活動膀胱の診断としては過活動膀胱症状質問票があります。

その内容は (1)朝起きたときから寝るまでに、何回尿をしたかA夜寝てから朝起きるまでに、何回尿をするために起きたか(2)急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがあるか(3)急に尿がしたくなり、我慢できずに尿をもらすことがあるか となっています。

これらをスコアー化し重症度を決定します。過活動膀胱の原因は脳や脊髄の疾患(脳卒中、脳梗塞、認知症、脊髄損傷など)、男性でしたら前立腺肥大症(尿が出にくい状態が続き、膀胱が過敏に働くようになった場合)などですが特発性(原因不明)が最も多いようです。過活動膀胱の頻度は40歳以上男性の7人に1人、40歳以上の女性に10人に1人と推定され、かなり多くの方が罹患してるわけですが、実際に医療機関に受診される方は22%位となっています。また年齢と共に有症状率は増加し50歳代は10%以下ですが70歳代では20%前後、80歳以上では30%とさらに多くなります。

治療としては(1)行動療法−生活指導(過剰な水分摂取やカフェイン摂取の制限、トイレ習慣の改善などの指導)、膀胱訓練(少しずつ排尿間隔を延長することにより膀胱容量を増加させる訓練法)など (2)薬物療法−抗コリン薬(膀胱の副交感神経の働きをブロックし、膀胱の筋肉の収縮を和らげます)、β交感神経作動薬(膀胱の交感神経に作用して膀胱の筋肉を延ばす作用があります)などがあります。これらの薬の副作用としては口渇、便秘などがあり、排尿困難となる場合もあるので処方する前に必ず超音波で残尿測定を行います。前立腺肥大症合併例では前立腺肥大症の薬である交感神経遮断薬(αブロッカー)が第一選択薬とされます。これから寒い季節となります。寒冷刺激で頻尿になりやすくなりますのでご注意ください。

 

尿路結石に関する豆知識
食生活の欧米化により増加傾向にあります
前立腺に関する豆知識
前立線癌は、年々増加傾向にあります

今回は腎不全についてお話したいと思います。

@腎前性腎不全
腎臓そのものの機能は保たれているが、出血、火傷などによる血流量の低下、心不全などによる循環不全によるもので乏尿(尿量の低下)を伴う。

A腎性腎不全
腎臓自体の機能が低下

B腎後性腎不全
腎機能は保たれているが腎臓より下部の尿路である尿管、膀胱、尿道が何らかの原因で圧迫、閉塞され排尿ができなくなり、腎臓で産生された尿は腎盂(腎臓で最初に尿が貯まる部位)に一杯になり腫れてしまう(水腎症)。具体的疾患としては尿管狭窄、尿管結石(但し一方のみの場合は健側腎が働くので尿毒症にはなりません)、尿管腫瘍、膀胱腫瘍、婦人科腫瘍、前立腺肥大症、神経因性膀胱などです。これらは何らかの処置(手術)をすれば回復する場合が多々あります。
上記が長期化すれば慢性腎不全(慢性腎臓病)となり尿毒症を発症し透析または腎移植が必要となります。尿毒症の症状としては浮腫、消化器症状(食欲不振、嘔気など)、貧血などのあらゆる症状があります。
慢性腎不全となり人工透析を受けている方は2010年12月31日現在で297,126人です。その原因疾患は以前は慢性糸球体腎炎が最多でしたが、2010年からは糖尿病性腎症とほぼ同数となり、透析導入の原因疾患では糖尿病性腎症が40%以上となり2番目に多い慢性糸球体腎炎の20%を大きく上回っています。人工透析は週3回、1回3から4時間かけて行います。

日本の人工透析の技術は世界でもトップレベルで何十年も透析を元気で受けている方もいます。腎機能が低下した場合まず尿検査で蛋白が検出されますので、検診等で尿検査を受ける機会があれば注意してみてください。
 
前立腺に関する豆知識
前立線癌は、年々増加傾向にあります

皆さんは最近前立腺について耳にすることはありませんか?前立腺は主に精液をつくる働きをする男性特有の臓器です。解剖学的には膀胱の前に位置します。男性が排尿するときは膀胱の筋肉が収縮し尿を押し出し、ついで前立腺(部尿道)を通りさらに前部の尿道を通り排出されます。前立腺が肥大した場合前立腺部尿道が圧迫され様々な排尿障害が起こるのが前立腺肥大症です。最近は前立腺の圧迫を和らげる薬がいろいろあり、かなり有効で前立腺肥大症で手術することは以前に比べ大分減りました。もう一つの前立腺の病気は前立腺癌です。前立腺癌でも肥大してない場合も多く、排尿障害もないことは珍しくありません。前立腺癌は増加傾向にあり2000年と比べ2020年には罹患数が3.4倍、死亡数が2.8倍になり、罹患数は肺癌についで男性癌の第2位になると予想されてます。前立腺癌の診断方法は触診(肛門より指で触診し硬結、表面不整などの悪性所見が無いかを診ます)と血中PSA(前立腺特異抗原)測定です。いずれかに異常所見があれば組織検査を行い組織診断します。組織検査の方法は肛門から超音波の端子を挿入し、前立腺をリアルタイムに見ながら系統的に端子から針を前立腺に刺し組織を採取します。時間は10分くらいで終了します。ただし多少痛いので当院では仙骨麻酔をして行ってます(組織検査後も歩行でき、食事も採れます)。前立腺癌は早期に診断されれば決して怖くない癌の1つです。特に症状がなくても健康診断の機会があれば血中PSA(前立腺特異抗原)の測定もすることをお勧めします。 泌尿器科 医師